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――ねえ…波の音、聞こえる?
まだ幼き日の君が尋ねる。
同じく幼き日の僕は、首を縦に振って頷く。
夜の海はしんと静まり返っていて、空と地平線はどこまでも暗く、まるですべてを包み込むように存在していた。
何年後かに起こる悲劇も、この闇が飲み込んでしまえばよかったのに…。
今でも耳の奥に響く波の音が、優しいゆりかごのように僕らを包んで、しあわせへと導いてくれればよかったのに…。
――あの波の音も、君は忘れてしまったのかな?
今でも僕の耳の奥に残るのは、波の音と君の声…。
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