メール

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《7日前》 深夜、どこからか聞こえた、鈍い振動音で目が覚める。天井をチカチカと照らすLEDの光。 朧気な意識でも、それがメールの着信だと理解ができた。 すぐに目を閉じるが、真っ暗な空間に点滅している光は、俺の瞼をこじ開ける。 「ちぇっ、うざいなぁ」 暗闇でなければ寝付けないのは、子供の頃からで、今も遮光カーテンを完全に閉じている。 光だけではない。水道の雫など、どんなに眠かろうが気になり出すと止まらない。 普段はズボラな俺も、殊睡眠に関しては神経質なのかもしれない。 「もうっ!」 遂には我慢ができず起き上がり、安眠を妨げている犯人に近付くハメを見る。 闇がもたらすはずの安息を、くすぐるように邪魔する光。 なんの事は無い、携帯を裏返せばいい話。 「こんな時間に誰だよ」 自分の携帯なら、メールを見てしまえば、問題は根本から解決するのだが。 犯人はカエデの携帯、そういうワケにもいかない。 カエデはというと、人の気も知らずに、スヤスヤと眠っていた。 付き合って二年、そろそろ結婚も意識してはいる。しかし、週に何度か泊まりに来るという半同棲状態も、気楽で悪くはない。 「ふあ……」 眠りを妨げていた、音も光も無い。心地良い静寂と暗闇さえ取り戻せたら、今は満足だ。 俺の鼓膜が捉えるのは、カエデの寝息だけ。 明日も仕事、もう寝よう……。
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