メール

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《6日前》 「アホかお前、そりゃ男に決まってるよ」 珍しく、さほど親しくもない先輩に誘われ、さほど好きでもない焼酎を酌み交わす。 話題に困窮し、笑い話のつもりで切り出した、昨夜の出来事。 「試しに一回覗いてみろよ」 下品に笑い、ヤニで黄色く濁った前歯をさらけ出していた。 「それって、最低じゃないですか?」 カエデを疑ったことなど一度も無い俺にとって、先輩の言う行為は、酷く醜く、そして情けない事に思えた。 「普通、そんな夜中にメールなんか来るか? ははっ、見ちまった方が、スッキリするぜ?」 この人は、自分の彼女にもそうなんだろう。大体、よく知りもしない後輩の、それも彼女に対して、こんなデリカシーの無いセリフを言える神経を疑う。 「そもそも女なんてなぁ……」 酔いも回ったのか、周りのざわめきが気にならない程大きな声で、意味の無いクダを巻き始めた先輩。 これ以上付き合うのは、苦痛以外の何物でもない。 「先輩、明日も仕事だし、そろそろ……」 「あ? じゃあキャバクラ……いや、風俗にすっか?」 ニンニク臭い息を撒き散らし、俺のうなじに腕を巻きつけふらつく。 既にただの酔っ払いでしかない男を、やっとの思いで振り切り、俺は電車に飛び乗った。 >>今日は忙しかった~。 夕方から急患が立て続けで、もう大パニック! 電車に揺られ、開いた携帯には、カエデからのメール。 着信は二時間前だ。 >>返信遅れてごめん。 会社の先輩に付き合わされてて、メールに気付かなかったよ。 もう寝ちゃった? ゲスな先輩と過ごした無駄な時間、忘れるためにも、せめて電話でカエデの声を聞きたい。 「十時か……」 電車を降りても、カエデからの返信は無い。 仕事で疲れていたようだし、もう寝てしまったのだろう。 「あれ?」 着信を残し、ワンコールで切るつもりだった。 「珍しいな、圏外だ」 仕事中は携帯を切っているカエデ。恐らく、俺にメールした後、充電もせずに寝てしまったのだろう。 >>おやすみ。 これを見る頃はおはようか(笑) もう一度メールをし、携帯を閉じた。
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