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感情がないだと……? 「どういう意味だ……?」 俺は顔をしかめて尋ねる。 「わからないの?下手くそってことよ。」 下手くそ…… その言葉は俺の頭に強く響いた。 しかし、俺は、楽譜通りに吹いているし、音色にも自信があった。 それもあって、どうしても納得できなかった。 「あら、納得できない?」 女はすました顔で言った。 俺は怖ず怖ずと頷く。 「たしかに、楽譜に忠実で、音も綺麗だわ。でもね、それだけじゃ、人を感動させ、音楽に引き込むことはできないの。」 女は熱心に語る。 俺はそんな女を呆然と眺め、たまに、ゆっくりと頷くことしかできなかった。
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