日高 沙紀

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日高 沙紀

 鳥の囀りを耳にして、身体を起こし薄目を擦った。 「朝…か?」  充電の終わっている携帯を手繰り寄せ、アナログの時計を見る。長針は約2の位置を、短針は約4の位置を差している。 「流石に…早過ぎるな…。…ん?」  寝呆け眼の瞳に、"新着メール一件"の文字が見えた。  メールは浩からだった。 『よっ(^-^)/ まだ起きてるか? 実は齋藤が、お前のアドレスを知りたいってメールしてきてな 取り敢えず許可が取れたらって返しておいた♪ 教えても良いか??』  どうでも良い内容だった。眠たい頭を起こしてまで読む様な内容じゃ無かった。 「勝手にしてくれ」  送られて来たのは昨晩だったが、一応そう返しておいた。  まぁ、この時間で二度寝をするのは、かなり危険だったから、丁度良かったのかも知れない。 「…喉…渇いたな」  それだけ呟き、コーヒーを煎れる。 「ふぅ…」  昨日よりも落ち着いた目覚め。恐らく、魔界が連日で無かった事による安堵と興醒めからだろう。  適当に朝食を終え、身仕度を済ませ、家を出る。 「…」  連日で無かったとは言え、黒い月は未だ健在。気を許すにはまだ早いだろう。 「お、神童じゃん。おはよーっ」  その声に不意に顔を上げると、目の前には…犬が居た。 「…?」  犬に馴れ馴れしく挨拶をされるような仲の奴は居ない。いや…先ず、犬と会話出来る様な特殊能力は兼ね備えていない。  犬に着けられたリードに気付き、辿る。辿る。辿る。…その先にはクラスメイトの浜野 慶治[はまの けいじ]が居た。当然だが、滅多に話した事は無い。 「…嗚呼、お早う」  つい、ぎこちない返答になってしまった。 「お前早ぇんだな~、まだ5時前だぜ?」 「まぁ、な。お前こそ…犬の散歩か」 「おうっ、日課だ」  そう言いながら浜野は、"お座り"をしていたマルチーズを抱き上げ、前足を持ち「オハヨー」と挨拶をさせた。 「…リード、長すぎだろ」 「そうか? まぁ良いじゃねぇか、出来る限り自由に近い状態にしてやりてぇし」  それに、悪さもしないから。と付け足す浜野、その後も何故か暫く彼と話してから、また学校で、と挨拶を交わし別れた。 「それにしても…」  俺は、つい呟きを漏らした。 「完全体育会系の自身がシェパードの様な浜野が、マルチーズか…」  何だかイメージが…と、俺は一人小さく笑った。
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