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「お、お帰り。遅かったじゃないか、どうした?」
教室に戻ると、浩が声を掛けて来た。確かに、あの後も黒芝と話をしていたせいで、かなり遅くなってしまった。
「まぁ良いや。それより今日の放課後の予定は?」
どうやら遊びに誘ってくれようとしたのだろうが、今日は嘘偽り無く予定がある。
「済まん、つい先程用事が入ったんだ」
「そうか…」
残念そうな顔をする浩。だが、すぐに明るさを取り戻した。
「もしかして女性絡みか?」
「あぁ」
『!?』
しまった…浩の冗談に素直に答えてしまった…。その瞬間、空気が変わった…変な方向に。
「あの神童が女…?」
「嘘でしょ…」
「いや、クールぶってるが実は以外と…」
周りからひそひそと、話し声が聞こえる。
「稔も男だしな、俺は可笑しくないと思う」
浩に到っては全力で勘違いをしていた。頭が良い分、間違った解釈をした時は厄介だ。
「ちがっ…!」
取り敢えず「違う」と言おうとしたが、今日は発言を遮られる日らしい。急に誰かが、後ろから首を締める様に腕を絡み付けながら飛び付いて来た。
「っ…!」
咄嗟に身体が反応し、対象を背負い投げしてしまったが、制服が目の端に映り、放り投げる寸前の所で引っ張り戻す事が出来た。
「ぉ…ぉおぅぉ…」
そいつはその場で四つん這いになった。引っ張った時に服が喉に食い込んだのだろう、首を押さえている。
「…齋藤?」
その姿には見覚えがあった。B組のムードメーカー(いや、トラブルメーカーとも言える奴)、齋藤 剛大[さいとう たけまさ]だ。落ち着いたらしくゆっくり立ち上がり、告げた。
「良いツッコミだ」
((…投げだよ))
この時、この場に居た全員が、心の中で同じツッコミをした事を、誰も知る由も無い。
「実の所、俺は気付いてたぜ、神童の才能に!」
『…』
「ふっふっふ、最近の人気男子第2位(オリコン調べ)の座や、数々の――…」
オリコンは一体何を調べているんだ…。それより、この変な空間…朝の件もあってか、よく解らない視線を送られる環境は、どうにかならないだろうか…。
「はぁ…」
魔界に巻き込まれてから、ろくな事が無い。一人でそんな事を考え始めた矢先、浩から質問された。
「相手は誰なんだ?」
皆が知りたいのはやはりそこだろう。俺は顎に手を当て、少し悩んでから答えた。
「…魔女だよ」
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