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また何も無い一日が終わりを告げようとしている。
全く詰まらないものだ、平凡過ぎる…。
{世界には平凡すらのぞめない人もいる}とよく番組や何かで言っていたりするが…正直遠い国の事な気がして実感を持てないのが実情だ。
「…」
俺は誰にも聞こえない程の嘆息をした。それと同時に授業終了の鐘が鳴る。
「どうした? 憂鬱そうな顔して」
前の席に座っている友人の春日 浩[かすが ひろし]が此方に振り向いて話し掛けて来た。
「いや、別に…」
そう言って適当にはぐらかす。
「そうか? まぁ良い、この後どっか行く予定あるか? 無いなら一緒にアヤナス行こうぜ」
「特に無いから別に良…」
「良いけど」と言おうとしたが周囲からの視線を感じ止めた。
(成程…浩と一緒に行く予定の他の奴らか)
視線の主数人を横目に見る…随分と嫌そうな顔をしている。
「いや、今日は予定が有るから辞めておく」
「そうか…解った、それじゃまた明日な」
「あぁ、また明日」
互いに挨拶を交わして、俺は友人達と教室を出て行く浩を見送った。
「ふぅ…」
浩は成績優秀で容姿も良く、人付き合いも上手い為、男女問わず人気がある。
一方の俺は、自分で言うのも何だが人付き合いはかなり下手で、周りからは暗い、近付き難い、と嫌われている…まぁ人付き合いの悪いのは、ある事情で俺が周囲から距離を取って接しているからなのだが。
そんな俺にお節介な浩だけは声を掛けて来る。
「はぁ…」
どうも今日は嘆息が勝手に出る日だ。色々考え事をしながらも帰宅準備を終え教室を出ようとすると、俺の少し前を歩くクラスメイトが目に映った。
彼女は橘 菊理[たちばな くくり]。喋る事が出来ず、筆談するしかない為、いつも欠かさずにスケッチブックとペンを持ち歩いている。
「…」
付けているつもりは無いのだが、行き先が玄関なのか結局ずっと橘の後ろを歩く事になってしまった。
「~♪」
当の本人は気にしていないのか上機嫌で歩いているが、後を歩く俺は少し変な気分だ…腰まで伸ばしたその美しい黒髪に少し見蕩れる…だがそれも玄関まで、その後は特に挨拶も無く別れた。
さて、これからどうしたモノか…。
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