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「ふぅ…」
家に帰り、取り敢えずベッドに腰を降ろした。
「…」
落ち着いてから、彼女との話を思い返す。
「そうだな…何と言われると…」
ただ漠然としか考えていなかったから、正直な所その問いへの返答は難しかった。
「いきなりでは、具体的な答えは無理かしら?」
俺の心を見透かしたかの様に、黒芝は声を掛けて来た。
「そうね…まぁ仕方の無い事だわ。良いわ、私からそれらしい選択肢を出すから、どれが良いか答えて」
「成程、解り易いな」
「それじゃあ…生い立ち。人柄。力。人付き合い…最期」
「最期…?」
黒芝の選択肢…そこに少し疑問を覚えた。
「リーゼロッテは…死んでいるのか?」
「えぇ、そういう事になっているわ」
「『なっている』とは、また煮え切らないな」
「彼女は生きているのだもの」
「…それは、お前の個人的な意見か? それとも、紛れも無い事実か?」
「さぁ? それは貴方の判断に任せるわ」
くすくすと黒芝は意地悪な笑みを浮かべる。
「そうそう、死んだとされる場所は、此処…綾女ヶ丘、新綾女よ」
「ッ!?」
何食わぬ顔で付け加えられたその言葉が、最も驚愕を齎す。
「ふふっ、貴方でもそんな顔をするのね」
黒芝は俺の顔を見て、愉快そうに笑っている。俺はどんな顔をしているのだろう…いや、先ず彼女の中の俺は一体、どんな人間なのだろうか…。
「感情を表に出さない。他人との間に自ら壁を作っている。本当の自分を隠している…と言った所かしらね」
こいつ…読心術の使い手か…。
「ふふふっ…」
黒芝は要注意人物なのかも知れないと、今更ながら思ったが…後悔先に立たず、覆水盆に返らずとはよく言ったものだな。
何だか最後は駄弁って適当に終わってしまったが、時間が遅かったのもあり、取り敢えず今日は解散になった。送っていくと言ったが、
「送り狼は御免だわ」
と断られた。…勿論そんなつもりが無いのは、彼女も承知の上だ。
そして帰路に着き、今現在こうして先程の事を思い返している。
「…」
しかし、情報量が足りない。今は考えるだけ無駄だろう…。俺は夕食を摂って早めに寝る事にした。
(魔界がいつ来るとも解らないからな…)
適度な休息を取るべきだと判断しての、健康的な生活を心掛ける事にした。
「…」
横になるとすぐに睡魔が訪れ、俺の意識は闇に飲まれた…。
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