別世界

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「解封…」  短く呟くと、伸ばした右手の先の空間が歪み棒状の物が現れる。俺はソレを掴んだ…。ずっしりとソレの重みを感じる…だが、もう持ち慣れたモノだ。 「…」  俺はソレを構えた、俺の手に握られたソレは柄の両端に刃の付いた大鎌…二次元の世界でしか見ない様な、一見有り得なさそうな武器は、まるで死神のソレ…。邪鎌・綴裁[じゃれん・てっさい]それがコイツの名前。 「貴様が何者かは知らないが…排除させてもらう」  俺は普通の人間では有り得ない速さで闇精霊に近付き綴裁を振るった。闇精霊は横薙ぎに両断されたかと思った矢先に、黒い塵となって霧散した。 「なっ…」  まさか消滅するとは思っていなかったから少し焦ったが、周囲に感じる無数の闇に正気を取り戻した。 「しかし、一体何故…」  問い掛けた所で誰も答えはしてくれない…取り敢えず俺は塔に向かうことにした。他に人が居れば、若しかしたら同じものを目にしてあそこに集まるかも知れないと思ったからだ。 「邪魔だ、退け」  闇精霊達を薙ぎ払い先に進む。奴らは動きが遅く、走っている俺には追いつけない様だ。 「む…」  重量の有るキャベツや袋からはみ出している長葱が移動をするに当たって少し邪魔だが、折角買った物を放置出来る訳も無く、結局置いておいても大丈夫そうな場所に行くまで持って行くことにした。 「誰も…居ないみたいだな…」  塔に向かって走り続けて居るが、闇精霊ばかりが挙っているだけで人とは一切出くわさない。 「着いてしまった…」  やはり此処がこの世界の中心らしく、闇の流れがやたらと強い。 「ふ…」  不意に笑みが零れてしまった…俺は、愉しんでいるのか? この不可解な状況を…。 「往くぞ」  誰に言うでも無く一言呟く。どうやら独り言も癖になり始めてるな。  そんな事を考えながら足を進めると、柱で出来た神殿の様な開けた場所に出た。其処には水晶に閉じ込められた少女の姿が有った。 「おい、大丈夫か!」  声を掛けたが、眠っているのか返事が無い。仕方無く水晶に近付こうとした時だった。 「…ッ!?」  並の闇精霊とは比べものにならない程の闇を感じ、咄嗟に後ろに飛び退いた。 「何者だ!」  そう叫び水晶の前を睨むと、空気が捻れ、更に大きな闇が溢れ出して来た。
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