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「――」
最早言葉にならなかった…さっきまでの闇精霊如きとは格が違い過ぎる。
目の前に現れたのは6体の黒い騎士の様な奴ら…リーダー格と思しき大男、巨槌を構える巨漢、背筋の伸びた武闘家、頭から翼の生えた女、宙に浮いている手足の無い奴、二刀を提げる小柄な女…全員かなり腕が立つだろう、威圧感が強い。
「アワリティア様…」
不意に二刀の女が大男に話し掛けた…"アワリティア"、確かラテン語で七つの大罪の一つ、"強欲"を示す言葉だ…綴りはavaritiaだったか…?
(この状況下で尚、俺は余計な事を…)
少し自己嫌悪する。だが、そんな此方の事など意に介せず奴らは話を続ける。
「此奴の碑はリーゼロッテの物では有りません」
「碑…? リーゼロッテ…?」
よく解らない言葉に悩まされたが、リーゼロッテは少し聞いた事がある気がした。
「不運だな、巻き込まれただけの碑を持つ少年」
「俺を…憐れむのか…?」
理解出来ない状況の中、敵に情けを掛けられるとは…本当に意味が不明だ。
「我々にとってお前は、殺しても殺さなくても良い、不要な存在…抵抗するのであれば、この場ででも切って棄てる」
二刀の女は冷たく…それでいて人間味のある口調で、そう言い放った。
「"お前は"と言ったな。と言う事は狙った相手が居るって事か?」
「そこまで教える義理は有るまい」
俺の問いは一瞬で砕かれてしまった。だが恐らく、他にも人が居ると考えて良いだろう。
「貴様らは何なんだ、それにこの世界は一体…」
「それも答える義務は無い、お前に有るのは死か生のみ」
二刀の女は、尚も淡々と告げる。
「問答無用か…だったら」
俺は綴裁を構え直す。
「貴様らを斃し、俺は生き残る」
俺のその一言で、場の空気が殺気に満ちるのを感じた。武闘家が臨戦体勢を取る。
「やめないか、イラ」
「しかし…スペルビア!」
スペルビアと呼ばれた二刀の女に抑制されたイラという武闘家は声を荒げた。
「勝てると思っているのか?」
スペルビアがイラを無視し、俺に問いかける。
「やってみない事には解らないだろう?」
俺の答えに無言のままスッと構えるスペルビア…だが、その時だった。
「何…っ!?」
イラの驚愕の声を最後に、突如赤い世界が崩壊した…。
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