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「…ッ」
鞄と買物袋を適当に放り投げ体をベッドに沈める。
「…」
思考循環に努める事にする。
まずは…あの世界よりも、騎士達だろう。規模がどれ程かも、どう言う原理かも解らない世界を理解するのは不可能…それよりも敵に成りうる奴の探索をした方が良いだろう。
アワリティア、スペルビア、イラ…全てラテン語で七大罪を意味する。スペルビアは傲慢、イラは憤怒…となると後は暴食のグラ、嫉妬のインウィディア、色欲のルクスリア、怠惰のアケディア…。
「…?」
確か奴らは6体だった…1体足りない。まさか、もう1体居ると言うのか…。
「冗談キツいな…」
想像したくもない、あんな異常な程の闇精霊を纏った奴らを7体も相手にするだなんて…自分の腕にそれなりの自信は有るが、同時に7体ともなると流石に無謀だ…。1体も屠れずに殺されるのが落ちだろう。
「せめて…他に人が見付かれば…」
呟いてはみたが、まだ居ると決まった訳では無いし、居たとしても戦闘能力を備えているとは限らない。
「望み薄…か。本当に冗談のキツい」
あの様子からして、今日の一度だけでアレが終わるとは思えない。若しも赤い世界にまた飛ばされた時は、ランドマークタワーには近付かないほうが良いかも知れない。
「ぅ…ん~…」
一旦、思考するのを止め体を伸ばす。結局まだ何も解っていない…何が解ってないのかさえも解らない…。
「ただ一つ絶対なのは…生き延びる事、か」
そう言って寝転がったまま天井を仰ぐ。今日も今日…つい先程までは、詰まらない人生だと悲観してきたのに、たったの一瞬で生死を別ける闘いの世界に加わるだなんて…。あまりにも両極端過ぎる。いや…寧ろ…。
「平凡を疎かにした俺への罰か…?」
想いを巡らせはするが、自問自答の果てに答が見付かる筈は無かった。
(これ以上は体に毒だ)
そう判断し、俺は眠りに就く事にした。正直、夕食を作る気力も食欲も無い…。
「…」
思い至り電気を消し、ベッドに横たわり直してから意識が遠退くまで、そう時間は掛からなかった。俺は、今日の出来事を走馬灯の様に流れ込んで来るのを意識しつつ深い眠りに入った…あの世界が幻であって欲しいと願う反面、また来て欲しいと願う矛盾した想いを抱きながら…。
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