Prologue

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 翼が、欲しい。あの鳥のように、自由に自分の力で、あの大きな青空を飛ぶことのできる、翼が──。  そんな夢を抱き、あの大空を自由に舞うことに挑んだ者は、決して少なくはないはずだ。  誰しも一度は夢を見て、挑み、そして諦めてきたその夢。しかし、その夢を諦めきれない一部が、その夢を現実なものへと変えた。  技術は発展していき、自力ではないにしろ、多くの人々が空を飛ぶことができるような時代になっても、人々はまだ自力で飛ぶことを夢見ている。  しかし、人々は覚えていなかった。空に近付き過ぎた人間は、神に天罰を与えられたことを。  例外もなくその天罰とやらは訪れ、それは本当に突然のことで、世界が徐々に崩れ始めてしまったのだ。  崩れた大地に代わり、そこには腐海と呼ばれる死の海が現れる。腐海の中に入ってしまった者は、体が瞬時に崩れて死んでしまう。  人々は残った僅かな大地で、それでも生き残るべく、日々持てる科学を進歩させ続けていた。  だが、神の怒りはそれだけでは済まなかったのか、更なる天罰を人々に与える。  これは、大半の大地を失ってしまった世界、アルカサスに生きる人々の物語──。
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