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ここまで集中した状態を仮に1日以上続けたとしたら、もう現実世界に帰って来れなくなってしまいそうな気さえする。
考えている時は、そこまで入り込んでしまう。
1時間位考えただろうか、ようやく僕はある程度の結論に達した。
いつの間に降り始めていたのか、外からは雨の音が聞こえてきた。
屋根から滴り落ちてくる雫が、ベランダの鉄の部分に当たって「カンッ、カンッ……」と歯切れよくスタッカートを刻んでいる。
きっと、僕がもう泣き疲れたから、変わりに泣いてくれているのだろう。
そんな優しい雨の音だった。
何だか少しだけ胸がスッとした僕は、テーブルに置いた写真を再び手に取り、この1時間で導き出した母からのメッセージを頭の中で整理した。
まず第1に、この写真の風景は僕が知っている地球上の風景では存在しないと言う事。
今まで世界中の有名な風景、建物を本やテレビ、インターネットで見てきたけど、こんなお城に囲まれた風景は見た事も無いし、ましてや、建物の天辺が雲を突き刺しているなんて。
そんな高い建物なんてまず存在しない。
今、全世界で1番高い建物は、クエートにある高さ1000mの超高層ビル。
次がドバイにあるブルジュ・ハリファで高さ828m。
でもこれ位の高さじゃまだ雲には届かない。
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