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今まで生きているうちに母からこんな話は1度も聞いた事が無い。
その事実だけで考えると、生きているうちは言うべきでは無いが、死ぬ前に伝えておかなければならない事。
何かで情報を掴んでこの場所の事を母が探していた可能性もあるけど、多分それは違う。
母は僕を置いて泊まりで何処かに行った事なんて今までに1度も無い。
考えられるとしたら、この場所と母は何らかの深い関わりがあって、母はその場所の事を知っていた。
そして、それを僕に伝えたという事は、多分母は僕にそこへ行けと言っているのではないだろうか。
それ以外でこの場所を僕に教える必要は無いような気がする。
トルベラという場所がこの世の何処かにはあって、母が僕に伝えようとしている何かがきっとそこにあるはずだ。
次第に雨足を強めていく外の音を窓越しに感じながら、僕は生きる意味を見つけていた。
母は帰らぬ人となった。
それは紛れも無い事実だ。
でも、母が最後に残したメッセージによって、僕はそこに行けばまた母に会えるような気がしていた。
あの優しくて、暖かい母のぬくもりを、トルベラという場所に行けばまた感じられるような気がした。
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