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小さい時にあの井戸にはお化けが出ると母に言い聞かされ、１２歳になった今でも近付く事さえしていない。
僕が井戸に近付いてそこから落ちたりしない様に、母がくれた優しい嘘だという事は、今ならそれくらい十分に分かっている。
そんな事を考えながら、ゆっくりとポストに手をかざし、覗き込むように郵便物を確認した。
……今日も届いていないか。
肩を落とし落胆する。
実際の所、毎朝欠かさず見に行く必要など無いと言われればそうなのかも知れない。
でも、僕には見に行きたくなるある理由があった。
そして、今日も空のポストを後にし玄関へと向かおうとしたその時……、
井戸の更に向こう側から誰かの声が聞こえてきた。
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