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「まったくあいつは……」
緩い坂道をのぼりながらそう呟いた。
帝国が発展を続ける中、このテレスの村は辺り一面緑ばかりの村だ。
言ってしまえば田舎……と言うことだが。
坂をのぼりきり、開けた場所には綺麗な湖があった。
「……やっと見つけたぞユリアン!」
その湖のほとりに佇んでいたユリアンと言う少年は、赤髪で細身の少年だった。
「よっ、ライン!」
ラインと呼ばれた青年は、銀色の髪を揺らしながらユリアンに駆け寄った。
「よっ、じゃないだろユリアン!今日は剣術の免許皆伝の試験をするって言われてただろ?」
「そんなことかよ……俺そんなものいらねえもん」
めんどくさそうな表情でユリアンはラインに答えた。
「まったく……お前がどう思おうが、お前は正統後継者なんだ。親父がまた泣くぞ?」
「泣けばいいんじゃね?なんならお前にやるよ」
「俺には無理さ。本当の息子じゃないしな」
ラインは小さいときにユリアンの父に拾われた。
要するに養子だ。
ユリアンの父は剣の達人で、息子であるユリアンにも小さいときから剣術を教えていた。
父はユリアンを正統後継者にしようと思い育ててきた。それ故にラインがなるわけにはいかないのだ。
しかし、ユリアンは全くその気がない。
「俺はそんな肩書きいらないし、守れる自信もない。俺は親父とは違うからさ」
ユリアンも父の事を尊敬してないわけでは無い。
むしろ尊敬している。だからこそ、その肩書きが重いと感じてしまうのだ。
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