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「まぁ、その辺でやめときませんか?これ以上言ってもユリアンには意味がありませんし」
「なんじゃ!お前もこの馬鹿の味方をするのか!」
「いや、そう言う訳じゃないんですが……」
たじろぐラインを横目にユリアンは家を出た。
「まったく……何だって親父はあんなに継がせたがるんだ?」
すっかり日が暮れた夜空を見上げながら、ユリアンは呟いた。
「剣術の稽古は辛いし、人を傷つけるなんて俺にはできない」
グレーデン流剣術はかつて帝国軍にいた騎士が使っていた剣術で、それ故に免許皆伝すれば軍にはいることになっている。
ただ、軍に入ると言うことはその先には戦いが待っている。
……人対人の戦いが。
「それに今の帝国軍は植民地を増やすために進んで戦争をしてるというし……」
そう、それこそがユリアンの迷う理由であった。
この国は二つの勢力があり、東西に別れている。
東のサクリスと、西のガリウム……テレスの村はガリウムに属している。
100年前には争っていたが、30年ほど前に停戦協定を結び、長い間この国は平和だった。
しかし、ここ10年の間にガリウムの王が変わり、停戦が破られた……と伝えられている。
「まぁ、聞いただけだから本当かどうかわからないけどな」
テレスは田舎ゆえに首都の話はなかなか入ってこない。
王の話だって人から聞いた話だから、信用はできない。
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