Scene 2

2/3
前へ
/11ページ
次へ
仕事が終わり、いつもの帰路を辿っていた。 電車の中。吊革を両手で掴み目を瞑る。仕事での緊張が解け、どっと疲れが押し寄せた。 何処かの駅に到着し、人が出入りする足音が聞こえる。 背中が誰かの肩がぶつかった。ふっと周りを見渡す。 自分の気持ちがそうさせているのだろうか。 誰しもの顔に色がみえない、能面のような表情をしていた。 そんなとき、携帯電話に一本の知らせが入った…。 「祖父が…で危篤だから、準備をしておいくように。」 うまく聞き取れなかった。しかし、父からの電話は一方的に切れてしまった。 一瞬、頭の中に疑問符が浮かんだ。 病気で入院しているのは祖母。 祖父は軽度の痴呆はあるものの、大病とは無関係だった。 あの祖父が先に…? 「準備?何のだよっ」 心の中で叫んでいた…。 分かってはいた。 しかし従姉妹が亡くなって半年。また黒色のネクタイを使用することなど考えたくはなかったのだ…。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加