第一咄―傾国散華

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第一咄―傾国散華

『私は、うまく笑えているだろうか』 私の中でそう考えるのが習慣になっていた時、その知らせが届きました。 『王允、呂布による董卓の暗殺』 私はそれに狂喜する反面、寂寥の思いを感じてしまいました。 私の死ぬ時が、遂に来てしまったのだと。 私が生きていれば、私は呂布の妻にならなければならない。 そして、いつしか漏れるのかもしれない。 私が養父王允の差し金で、董卓と呂布を離間させたのだという事が。 「……私はッ!!」 まだ死にたくはない。 私はただ……もっと愛されて、愛して。 そうやって生きていく事を、知りたかっただけなのです。 裏切りと欲望と。 その中で死に絶える私を想像して、吐き気すら催しました。 それはまさしく、絶望の一言。 「お養父様……」 私は、戦場に咲く花でしかありません。 人々が入り交じる混沌に、押し潰され消えるだけの存在でしかないのです。 ただ枯れていくだけの、僅かな命。 『そして、また新たな草花が咲くのです』 だからこそ、私は飲みましょう。 介錯の毒と、命の水。 その両方を口にして、混沌の中で枯れましょう。 乱れ、彩り、最期の色を飾りましょう。 いつかきっと、踏まれる花を慈しむ者が現れると信じて……。 ―終―
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