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「あーっ、いた!瑛太!探したんだよ?」
梓が指差した先には、長身の男が机に突っ伏して爆睡していた。
「………ふぁ…?」
瑛太と呼ばれたそいつは、梓の声にむっくりと起き上がって、間抜けな声を出した。
頬にくっきりと本の跡がついている。
枕にしてたな…。
「ふぁ?じゃないよ。瑛太、委員会のプリント持ち帰ったままでしょ?どこ?」
「……図書室では静かにしなきゃ、あず」
「あ、ごめん!……じゃなくて、委員会のプリントっ」
「……うん、どこいったんだろ」
寝ぼけた間抜けな顔のまま、瑛太は間抜けなことを言う。
こいつは神谷瑛太(かみやえいた)。
数少ない俺のツレのひとりだ。
ふわふわとウェーブのかかった天然の茶髪。
色素が薄いのか、目も薄茶色。
身長は俺より高い。
パッと見、ハーフに見えるが純日本人だ。
性格は無口だし、天然だし、いつも独りで寝てばかりいる。
猫みたいなやつだ。
「思い出して!締め切り今日までなんだから」
「………?」
半分しか目が開いてない。
けどこいつなりに思い出そうとしてるみたいだ。
「……つくえ」
瑛太がボソッと呟く。
「つくえ?つくえに入ってるの?じゃあ取りに行くよ!ほら」
梓にせかされて、瑛太がのそのそと立ち上がる。
その様子を何気なく見てた俺の視界に、不意にあるものが映った。
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