Round1・生意気な奴

6/35
前へ
/112ページ
次へ
  「あーっ、いた!瑛太!探したんだよ?」   梓が指差した先には、長身の男が机に突っ伏して爆睡していた。   「………ふぁ…?」   瑛太と呼ばれたそいつは、梓の声にむっくりと起き上がって、間抜けな声を出した。 頬にくっきりと本の跡がついている。 枕にしてたな…。   「ふぁ?じゃないよ。瑛太、委員会のプリント持ち帰ったままでしょ?どこ?」   「……図書室では静かにしなきゃ、あず」   「あ、ごめん!……じゃなくて、委員会のプリントっ」   「……うん、どこいったんだろ」   寝ぼけた間抜けな顔のまま、瑛太は間抜けなことを言う。   こいつは神谷瑛太(かみやえいた)。 数少ない俺のツレのひとりだ。   ふわふわとウェーブのかかった天然の茶髪。 色素が薄いのか、目も薄茶色。 身長は俺より高い。 パッと見、ハーフに見えるが純日本人だ。   性格は無口だし、天然だし、いつも独りで寝てばかりいる。 猫みたいなやつだ。   「思い出して!締め切り今日までなんだから」   「………?」   半分しか目が開いてない。 けどこいつなりに思い出そうとしてるみたいだ。   「……つくえ」   瑛太がボソッと呟く。   「つくえ?つくえに入ってるの?じゃあ取りに行くよ!ほら」   梓にせかされて、瑛太がのそのそと立ち上がる。   その様子を何気なく見てた俺の視界に、不意にあるものが映った。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加