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「あれ?りょーちん戻らないの?」
足を止めた俺に気づいた梓が、訊ねる。
「…あぁ、悪ぃ。先行っといて」
俺は目に映ったそれから視線を外さずに言った。
梓はちらりと視線の先を確認すると、納得したようにやれやれとため息をついた。
「あー…そーゆーことね。ほどほどにしとかないと、後で痛い目みるよ?」
「うるせぇよ。早く行け」
梓はべーっと舌を出すと、立ったまま寝かけてる瑛太の背中を押して部屋を出て行った。
今まで騒がしかった部屋が、嘘のように静まり返った。
これが普段の図書室の姿だ。
図書室は校舎から離れた別館にあるため、生徒はあまり来ない。
普段からここを利用するのは、瑛太ぐらいのものだろう。
もちろん、昼寝のために。
今日も、生徒は誰もいない。
───ただ二人を除いて。
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