Round1・生意気な奴

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「あれ?りょーちん戻らないの?」   足を止めた俺に気づいた梓が、訊ねる。     「…あぁ、悪ぃ。先行っといて」     俺は目に映ったそれから視線を外さずに言った。     梓はちらりと視線の先を確認すると、納得したようにやれやれとため息をついた。   「あー…そーゆーことね。ほどほどにしとかないと、後で痛い目みるよ?」   「うるせぇよ。早く行け」     梓はべーっと舌を出すと、立ったまま寝かけてる瑛太の背中を押して部屋を出て行った。                   今まで騒がしかった部屋が、嘘のように静まり返った。 これが普段の図書室の姿だ。   図書室は校舎から離れた別館にあるため、生徒はあまり来ない。     普段からここを利用するのは、瑛太ぐらいのものだろう。 もちろん、昼寝のために。       今日も、生徒は誰もいない。       ───ただ二人を除いて。
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