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「…おい」
「………」
無視かよ…。
俺は少しカチンときて、声のトーンを上げてもう一度呼んだ。
「おい、聞こえてねぇのか」
「……なんですか」
少し眉を寄せて、女が俺の方に視線を寄越す。
艶やかに潤んだ瞳は、真っ直ぐにこちらを射抜く。
…なんだ、そのカオ。
まるで邪魔とでも言いたげだな。
気にいらねぇ。
女の表情にまたカチンとしつつも、言葉を続けた。
「お前、一人?何やってんの?」
「はぁ。一人ですけど。本を読んでます。…見れば判りますよね」
呆れたように言うと、女は真っ直ぐな視線を本に落とす。
…いちいちムカつく奴だな。
「今、暇なんだろ?」
「暇じゃありません」
「どうみても暇じゃねえかよ」
「暇じゃありません。本を読んでます。それに委員会の当番ですから。仕事中です」
やりとりの最中も本に目を落としたまま、こっちすら見ない。
…ムカつく。
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