さくら

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しかし旋は首を横に振る。 「咲耶よぉ…お前は一目惚れって信じるか?」 「な…何をいきなり…まさかお主…」 「俺もお主呼ばわりは好かんな。旋って呼んでくれて構わねえ…よっ!」 旋は闇に向かって火術を放つ。 「女を打破った所までは評価しますが…籠絡されるとはねえ。都にはもっと良い女がいますよ?」 闇から部下を率いて現われたのは蒼満だった。 「お前…ずっと人の情事盗み見てやがったのか?」 「今思えば最中に仕掛けるべきでしたね。まさか貴方がそんな下賤な妖怪に情をかけるとは思いませんでしたから」 変わり者とは表向きの姿。 賀茂蒼満とは陰陽寮の裏の仕事を請負う人間。 例えば仲間の粛正とかそういう汚れ仕事を。 「貴方一人消えてくれれば怖いモノはありません。さようなら、唐渡りの迷い人」 蒼満が手を上げると同時に部下が動き出す。 「これだから…何処の国もお上ってヤツはよおっ!」 板斧を掴んで旋は部下達に切り掛かる。 「旋ぃぃぃっ!」 「咲耶は…俺の女だっ!絶対守るっ!」 桜の花びらが舞い散る中、旋と陰陽寮裏部隊の戦いが始まる。 だが流石の武を誇る旋も多勢に無勢。 次第に押されて木に身体を預ける。 「惜しいです。それだけの力を持ちながらたかが妖怪如きに命を捧げるとは」 冷笑を浮かべる蒼満に旋は言った。 「妖怪だろうが何だろうが惚れちまったら命懸けるしかねえだろ!相手のどんな罪も背負ってやれる覚悟が無くて愛せるかよっ!」 旋の言葉に咲耶は心を打たれた。 時間なんか関係無い。 こんなにも自分を愛してくれる男がいるなんて。 「下らないですね。女とは血統を残す為の器官に過ぎません。愛なんか快楽に付随する幻想ですよ」 「ふ…あはははははっ!そうかい、そうかい!じゃあてめえとは一生相容れねえなあっ、蒼満っ!」 「その様ですね。じゃあ死になさい、旋」 蒼満が繰り出す氷の刃が旋に襲いかかる。 「い、嫌じゃああああっ!」 ドス…ッ! 「咲…耶?」 旋は咲耶の胸を貫く氷の刃を見る。 「妾も…好きじゃ…旋が…たまらなく…愛しいのじゃ…」 そう言って旋に寄り掛かる咲耶。 「滑稽な茶番劇ですね。ならば幻想を抱きながら死になさい」
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