18人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーゆー奴って、なんかすごいいじめたくなるんだよ」
「そっち!?」
真面目に言い切ったルティスにツッコミ続けるクーレイ。彼は本当に(兄へのツッコミとツヅカへの配慮が)よき弟である。
「何なんだよッ! 本当にツヅカが好きなのかよ!?」
「好きだよ? 好き過ぎてツヅカと手合わせして怪我させた兵を、気絶程度の闇討ちをしてやったからな♪」
「!!?」
またルティスが楽しそうに笑う。その顔は天使のような微笑みなのに、クーレイにはなぜか悪魔の黒い微笑みにしか見えなかった。
「にもかかわらず、ツヅカはへらへら笑って許すし、そいつの怪我を治療……俺、されたことないんだけどなあ……?」
ルティスは窓から、小さな庭園にあるベンチに座り、何事かを叫んでいるツヅカを見る。
クーレイは一瞬、ツヅカを見る兄の目が、餌を狙う飢えた獣か何かに見えた。
「まあいいけど。どのみちツヅカは俺の手の中だし♪」
「…………」
この時、クーレイは思った。
(兄貴……サディスティックにさらに磨きが……)
ただでさえ厄介な兄だったのに、ツヅカが来てから日に日にひどくなっている気がする。
腹黒い兄に隠された奇妙なこの愛情は、果たしてツヅカに届く日が来るのだろうか。
(……永遠に届かない方がいい気がするな――いろんな意味で)
-Fin-
最初のコメントを投稿しよう!