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「ふ、ふぇええ……っ」
「ちょっと……ルオン、歩けないって」
「ぼ、僕も歩けないよぉ……っ」
「……あーもー」
ユリは自分の腰に抱き着いて、涙目でガタガタ震えているルオンに聞かれないよう、小さくため息をついた。
(それもこれも……)
先に行った馬鹿皇子のせいだ、とユリはルオン以外の皇子たちに、怒りのボルテージを上げていった。
事の始まりは三十分くらい前。
朝早い時間から、アトレシア国で年に一度のカーニバルが開かれたのだ。
それにユリとルオン、そしてアユミたちももちろん興味を持ち、いろいろ出店を見て回っていた。
「すっげぇっ! 初めて見るもんばっかりだ!」
「ホントホント! 何て言うか、サーカスみたいな感じ!」
一同の中でも、特にクーレイとツヅカが、子供のようにはしゃぎまくっていた。
「おまえら……ちったぁ落ち着け」
そう言って静かに見ているアユミだが、彼女も他の一同も、魔法大国とはまた違う異国の文化に、少なからず興奮していた。
「アトレシアは機械大国だからねー。街の規模も比例して大きいんだ」
「電車で移動してるくらいだしねぇ……ん?」
シグナルの話に相打ちを打っていたユリは、ふと、横にある大きな催し物に目を向けた。
「どしたの?」
「うん、なんか面白そうなのがあってね」
ユリの言葉に興味を示した仲間たちが「どれどれ」と看板を見る。
「…………」
「うわっ、面白そう!」
「おい……これ、マジか?」
仲間の反応は様々だった。
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