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信じていたのに裏切られた。
好きだったのに殺されかけた。
あの時から……誰も信じられるはずがなかった。
――けど……。
『さようなら……シンフィーク』
『やめてよ……こないでよ……うわぁあああッ!!!』
「…………!!」
とある夜のことだった。
シンフィークはガバッと起き上がり、荒くなった息を調える。
「……なんで」
今になってあの時のことが夢として蘇ったんだ。
そう思って頭を抱え、ふと気がついた。
「……アユミ?」
いつも自分の胸に収めているはずの少女がいなかった。寝はじめる時まで、確かにずっと一緒だったはずだ。
「……だからか。ったく……」
いつの間にかいなくなった温もりに、どこか寂しさを感じた。どこに向かったのかとキョロキョロと部屋を見回す。
「――あ」
見つけた。彼女はベランダあるティーテーブルに腰掛け、夜空を見上げていた。
「……んもぅ……」
つぶやきながら自分もベランダに出た。その途端、体が寒さで小さく震える。
今は三月の半ばだが、それでも冬の寒さは免れない。小さく身を抱きしめながら、空をじっと見上げる彼女に声をかける。
「……何してんの?」
「え……あ、シンフィーク」
たいして驚かずに彼女――アユミは振り返った。
「なんで起きてんだ」
「寒くて。目が覚めたら、アンタいないし。せっかくぬくぬくと温まっていたのに」
「俺はカイロかよ」
アユミがそうつぶやく中、シンフィークは引き寄せられるように隣に来た。
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