依存症

3/6
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「隣、いい?」 「ん? ああ」  アユミは特に断る理由もないのでこくっと頷く。断れなかったことにシンフィークは嬉しく思いながら彼女の隣に座った。 「……ん。ホントに綺麗」 「だろ?」 「……まあ、アンタほどじゃ……ないけど」  不敵にも見える顔で頷き返され、最後の方はそっぽを向いてごにょごにょと言葉を濁す。  オポシティオとの戦いから、シンフィークはアユミへの意識が強くなっている。……が、本人にはイマイチうまく伝わっていないようだ。 (気づいてくれない……どころか、追求もしないしね……)  シンフィークの気持ちなどこれっぽっちも気づいていない様子である。  アユミ自身はシンフィークに気があるものの、やはり恋愛対象というより、友達として彼を見ていることが多かった。 「……ねぇ、アユミ……」 「ん? なんだ?」  不意に話しかけてもいつもと同じ返事を返す。それに少しちくりと胸が痛んだ。 「アユミはさ、その……恋愛とか、そんなのに興味ないの?」 「……は? 恋愛?」  何言ってんだこいつ、みたいな目で見られたが、シンフィークはそれに気づかず、しどろもどろになりながら言葉を繋げる。 「だってアンタ……兵士とか国民とかに人気だから……その、毎日手紙が……四、五十枚……来てるし」 「ああ……確かにないな。恋愛には興味がない」  事実だけにアユミは否定しなかった。 (……じゃあ……ボクは?)  素直な答えに気持ちが、胸が張り裂けそうになった。気持ちに動かされ、シンフィークは無意識に顔を近づける。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!