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「はあ~~~っ……」
盛大なため息。
うららかな春の陽射しとは裏腹に、歩く少女は暗い表情を浮かべていた。
その身を包む真新しい制服は、この辺りで可愛いと評判のもの。
女の子なら誰しも心が弾みそうな要素も、今の彼女の鬱屈を晴らすには足りない。
とぼとぼと、重い足取りで歩みを進める。
「は~なっ♪」
後ろから掛かった声に振り返れば、同じ制服を着た少女が駆けてくる所だった。
「……遥(はるか)」
花、と呼ばれた少女は浮かない面持ちで遥が追いつくのを待つ。
「おはよう。どうしたの?元気が無いみたいだけど……」
隣に並んだ遥は、そう言いながら花の顔を覗き込んだ。
「ん……」
花はそれに曖昧な返事をして俯く。
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