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「…お嬢さんは、この近くに住んでいるのかい?」
いつもは喋らない彼が、私に話し掛けてきたのだ
「ええ。ここの近く」
「そうか、だからいつも来てくれるんだね。
他の子供達とは、遊ばないのかな?」
「近くにいないのよ。だから、私はいっつも一人なの…」
喋っている間も、彼は手を止めずに芸をし続ける
「一人は嫌い?」
「嫌いよ、大っ嫌い。だって、つまらないんだもん」
「………でもね、お嬢さん。一人でも、進まないといけない時はあるんだよ?」
彼は、まるで諭(サト)す様に私に話しかける
それでも、手は止まらずに、彼のいつも失敗する最後のところになっていた。
「…道化師(ピエロ)さんって、イジワルなのね」
「そうかい?初めて言われたよ」
そう言いながら、彼はいつも失敗するところを見惚れるぐらいに、綺麗に成功させた
そして、いつものおどけた笑顔を私に向ける
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