夢のような毎日

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残念ながら3年生の春、夏共にあと一歩で甲子園出場は逃したものの副主将として3番打者として都内で高校野球をやっている人は私のことを知らない人はいなかった。 高校野球を引退後進路で慌てる周囲をよそに私はある裕福そうな年配の女性に声をかけられベンツの後部座席に乗り渋谷まで連れいかれた。店の名前すら記憶にないが、どう見ても金持ちしか来られないような料亭の前でその車が停まりその女性と一緒に料亭に入った。 個室に通されると、またどう見ても金持ちそうな年配の男性がそこにおり先ほどの女性と三人で食事をすることになった。 私の野球の話をしながら食事をしていると男性が「今日が君の人生の始まりだよ。私達に全面支援させてくれ。」と言った。何が何だかさっぱりわからず「はい。」と答え料亭を出てまたベンツに乗り家まで送ってもらった。 帰りの車の中で女性に「どういうことなんですか?」と聞くと「社長はあなたのスポンサーを名乗り出たんです。私は社長秘書のAです。」と答え私に名刺を差し出した。 甲子園に出てから街中で声をかけられ食事をご馳走になることはよくあったので、今日もその程度だろうと思い詳しいことも聞かずホイホイついて行ったわけだが、名刺の社名をみるとMビルと書いてあった。 それからというもの野球用品はすべてその社長に店から電話して秘書が支払いにくる。それだけならまだいいが、車の免許を取った時新車のグロリアが届いた時にはとてつもなく驚いた。当時はバブル経済の真っ只中でそういう人達は金を消費するのに苦労したんだろう。 しかし私はドラフト当日ある球団の4位指名の連絡を前日にもらっていながら、当日その球団が上位をクジで外し進路を失い、地方の大学に進学することになった。
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