突き付けられた現実

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突き付けられた現実

大学に進学しても社長からの支援は続いた。しかし、大学の野球部の寮生活で下級生であるために外出もあまりできず、社長からは定期的に私がオーダーしたバットが定期的に送られその他の道具も半年に一回送られてきていた。 三年生になり上級生になった私は寮に社長から買ってもらったグロリアを持っていき毎週2回は六本木に夜中に繰り出し朝の練習前までに寮に帰るという生活を繰り返していた。一生懸命練習しなくてもそこそこ試合に出ているので、高校までね直向きさは欠片もないダメな野球選手になっていた。 そんな状態で迎えた春のキャンプ。すべてが順調に感じていた。 ここから一気に人生のドン底に落ちていく。 紅白戦で私はレギュラー組の4番。先に守備につき先頭打者が私の守るライト線にフライを打った。フェンスギリギリであったが捕りにいきフェンスに激突した時左膝に感じたことのない衝撃が走り、頭がボーっとしながらその場に倒れた。立ち上がれない。 病院に連れて行かれ「左膝靭帯断裂」と言われキャンプ地を離れることになった。 寮に帰り私は秘書の女性に電話をした。いい病院でも紹介してもらおうと安易な気持ちでいた。 翌日スーツを着た男性が私を尋ねてきた。病院に連れて行ってくれるものだと思っていたが男性は社長からもらったグロリアを引き上げに来たと言うのだ。訳が解らず社長に電話したが社長は不在と秘書の女性が電話にでた。 「社長はあなたへの支援から手を引くことにしました。」 要するに野球選手として私を見切ったということだ。自惚れていたツケが回ってきたと思った。 ケガもよくなりグランドに合流した時はもう春のリーグ戦も終盤でチームは優勝争いをしていた。復帰した日にここまで私の代わりにベンチ入りした同級生は私を歓迎しなかった。それどころか「ここはおまえみたいな陽のあたる場所にいた奴が野球やる所じゃないんじゃ」と言われた。後にこいつは社会人野球に進み主将として都市対抗に出場するなど華々しい野球人生を送った。 もう私に這い上がる気力はなく今まで通り六本木で酒を浴び練習中にブルペンの影に隠れ昼寝をするようなどうしようもない野球部員に成り下がっていた。
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