全てを。

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 大事なものを全て捨て、  大事なひとに別れを告げた。  ケータイと充電器にぎりしめ、身一つで逃げてきたこの地、平城(なら)の京(みやこ)。  いにしえの歴史が、この地のそこかしこに息吹いているのが感じられる。    ふるさとから逃げ出した私がやっと手に入れた安住の地。  ここで暮らしてゆくのだ。  望むなら、ずっと。  ところが今日のバイト帰りのこと。  帰ってきてみたらヤツラが『いた』。      ヤツラとは、私の実の母に伯母2人のこと。  やたらかしましい、自称美人三姉妹のおばちゃんsである。 ①伯母その1は部屋干ししていた下着チェックをし、 ②母はタンスに隠したポエム帳めくりに余念がなく、 ③伯母その2は下宿先の奥さんに手作りケーキを差し入れていた。 ①~③の光景を目の当たりにした私は、貰い物のイチゴを靴の上に落とした。  美人三姉妹、来襲――――
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