全てを。

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「あっけない、2ヶ月間、失踪してた娘に対する言葉がこれだけ?」    車が大通りに出るのを見送りながらつぶやいた。 「大嫌いだったよ、あんたたちなんか」  こんなもので情にほだされると思っているところが笑わせる。  二千円じゃ一日分の食費にもならないんだって。    でも、 ――せいぜい雪には気をつけて帰りなさいよね!  もう見えない車に向かってつぶやく声には、思ったほどの敵意はない。  下宿にもどり部屋へ入ると、手紙をタンスに仕舞いこんだ。    返事は出すべき?  電話で済ますべき? 「ごはんですよ」  忙しい考えを中断させたのは、下宿の奥さんの呼ぶ声と、ただよう味噌汁の匂い。  伯母たちが丹誠こめてこねくりかえす、ご自慢の家味噌の匂い。  もう戻ることもないであろう遠い故郷。  ちらりと沸き起こった『寂しさ』は気の迷いのせいにしよう。  今はただ。 「はーい」  新しい土地で良くしてくれる心優しい人が呼ぶ声に元気よく返事をし、立ち上がった。 Fin
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