第一章 はじまりは

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緑が広がる大陸の広大な大地。 特に目立った物がなく、のどかなこの地の空を僕は飛んでいた。 国境を越えて郵便物を運ぶのが仕事だ。この仕事は一年前に父から受け継いだものだ。病気の父はもう飛べず、長男である兄は戦争に行ったきり戻ってこない。だから僕が家を支えるしかないのだ。 運ぶものは様々だが、だいたいが手紙だ。三年前から始まった戦争のおかげで、戦地から故郷への兵士達の便りや故郷から愛する家族や友人、恋人への便りを運ぶ事が多くなっている。 自分は仕事を受け継いだ時からその仕事しかしてないから、それが普通に感じられていた。 僕達が住む国は戦争はしていないが、隣の同盟国は完全に戦火に飲み込まれている。 今日はその国で手紙を待つ人達のために、僕は今空を飛んでいる。 国境を越えた所で激しい雨が降り出した。ゴーグルに水滴が当たり、弾ける。ろくに前が見えないほどの激しい雨だ。僕はコンパスを見ながら雨の中を飛ぶ。もう少しで飛行場につく筈だ。 だがおかしい。何時もは見えるはずの飛行場の灯りが見えない。進路を間違えたのだろうか。 機体を斜めにし、僕は下を覗いた。飛行場の滑走路が真下に見えた。ちゃんと進路は合っていた。だが、飛行場の様子がおかしい。滑走路の所々に大穴があき、飛行場の建物は崩れ落ちている。 なんてことだ。 飛行場は敵の爆撃を受けたのだった。
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