16人が本棚に入れています
本棚に追加
メルク公国第702戦闘航空隊
メルク公国のとある部隊である。訓練課程を終えたばかりの若いパイロット達で構成されたこの部隊の基地は、前線から離れた田舎にポツンとあった。
その基地に一台の軍用車両が入る。
門で当直の兵士に運転手が話しかけると、兵士は電話をかけ、しばらくしてから門を開けた。
車両が建物の前で止まると、建物から担架を抱えて数人の兵士が車両に駆け寄る。そして車両から一人の負傷者を担架に乗せると、また建物の中へと戻っていった。車両はというと、再び動き出し、別の建物の前に止まった。車両からは一人の士官と思われる女性が降り、建物の中へと入っていった。
廊下をまさに軍人の鏡というような姿勢で歩く女性士官。その目つきは鋭く、すれ違った下士官達は息を呑まれる。女性士官は大きな扉の前で止まると、扉を軽く三回叩いた。
「入りなさい」
中からこれまた女性の声がした。女性士官は「失礼します」と中の人に聞こえるように言い、扉を開けた。
「よく来てくれたわね、本田少佐」
部屋の奥の机で書類に目を通していた女性が、書類を机に置くと立ち上がり、彼女に歩み寄って右手を差し伸べた。女性士官も右手を差し伸べ、握手する。
この書類に目を通していた女性はこの『ラットロン基地』の指揮官である『クレアルイス・ケアリー大佐』である。そして大佐と握手をしたこの女性士官はメルク公国の同盟国、『大和大国』から派遣された『本田真野少佐』である。
「貴女の到着を待っていたわ」
「命令とあらば、何処にせよ私は向かいます」
本田少佐は表情一つ変えないで言い放った。
最初のコメントを投稿しよう!