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「ところで、さっき連絡を受けたけど負傷者を一名運び込んだって」
少佐を座らせた後、大佐が自分の何処に座りながら尋ねる。
「ここえ来る途中、撃墜された航空機の中から救出したパイロットです。僭越ながらこの辺りには病院もなく、この基地に搬入するしかないと判断しました」
「彼は捕虜かしら?」
「民間人です」
その言葉を聞いた大佐の目が、少し自分を睨んだのに本田は気づいた。
「まぁ、そういうのは嫌いじゃないけど、今は戦争中ということを忘れないでちょうだい」
「は」
気がついたら鉄製の安っぽいベッドの上に僕は寝かされていた。頭には包帯を巻かれ、腕には点滴の針が二本刺さり、管から薬品が注入されていた。
確か自分は敵戦闘機に攻撃されて燃え盛る機体を死に物狂いで操りどうにか麦畑に墜落するように不時着したんだったか。その後の事は思い出せない。頭がまだボーっとしている。見たところ、誰かに助けられて病院にでも搬送されたのだろうか。それとも既に自分は死んでいて天国か地獄にでもいるのか……
ふと、耳が誰かが話し合っている声を捉えた。声はだんだん近づいてくるといきなり止んだ。何事かと、声のした方に顔を向けようとするが、激しい痛みにおそわれ、それは出来なかった。ガチャリという音とともに誰かが部屋に入って来るのが分かった。
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