第一章 はじまりは

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黒煙を吹きながら一機の戦闘機が着陸態勢に入った。その後方にさらに二機の戦闘機が同じように着陸態勢に入る。どの戦闘機も被弾しているようだ。 煙を吹いている機体は難なく着陸したが、後ろの一機は速度が速すぎたのか、地面に脚が着くと同時に跳ね上がり、再び上昇する。そして機体がちゃんと着陸し、停止したのは滑走路の奥の方だった。 もう一機は脚に被弾して故障でもしたのだろうか、左側の車輪が下りていない。しかしどうすることも出来ないので、そのまま着陸する。滑走路に突っ込み、プロペラが地面をえぐり、機体は速度のあまりひっくり返った。砂埃を上げて墜落のような着陸をした戦闘機のもとにその場にいた兵士達が駆け寄る。 そんな様子を基地の一角で見ている二人の兵士がいた。 大和大国陸軍小尉、宇部 鷹丸と大和大国海軍准尉、風鳴 燕仙だ。大和大国からメルク公国に派遣されたパイロットである。 「四機、撃墜されましたか」 帰還した三機を見ながら風鳴が言う。 「この基地から出撃するんじゃ、前線は遠すぎる。パイロットも精神的に辛いんじゃないか?」 ヤスリで爪を削りながら宇部が言う。 「しかし、そんなに距離はありませんよ?」 「いや、そうでもない。こっちの使ってるメッサーはお前の零式よりも航続距離が短い。帰り道の燃料を考えながらの戦闘だ。ただでさえ気がいる格闘戦(ドッグファイト)に余計な頭使うと生存率も減る。そして何よりこの国の兵士は我が軍よりも精神的な面が弱い」 「だから負けると?」 宇部は頷く。 そんなものなのだろうか?と風鳴は再び戦闘機の方を見た。ちょうどひっくり返った戦闘機のパイロットが担架で運ばれるところだった。
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