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夏休み、それは休む時。夏休み、それは一番燃える季節、特に野球部は…。入らないと決めていたのに、野球部の先輩に目をつけられ、無理矢理に野球部に入れさせられた。拒否はした。けど、言っている事も聞いてくれず、この夏終わるまでと勝手に決められ、まぁいいかと夏が終わるのを待っていた。
が、現実、今投げています。七回表の守り、急きょリリーフで出ることになり、ツーアウト満塁、同点で迎えている。初球はど真ん中スライダー。ストライク1。満塁で出すとは…、監督もイカレている。一応言います。僕、まだ一年なんですけど…。そう思っている間にキャッチャーからサインが送られる。
2球目、外にカーブの指示。従うしかないのでとりあえず投げる。バッターは空振り。ボールが返ってきた。僕は溜め息を吐いて次の指示を待つ。
球場を見渡してみた。相手チームの応援がよく聞こえた。僕はまたもう一つ溜め息を吐いて指示を見る。
インコースギリギリにストレート。僕、ストレート投げるのあんまり好きじゃないんですけど、と思ったがしょうがないので思いっきりギリギリに投げ込む。ワインドアップをして投げる体制に入る。腕を思いっきり横手に振ってボールを放った。相手バッターも負けじと思いっきりバットを振った。しかし、球にかすることなく空振り三球三振。
その時、僕は吠えた。小さい頃から空振り三振がとれるのははっきり言って凄くうれしいことだったから。
援護頼みますよ、と他の選手に言った。みんなはオー、とデカい声で答えた。
そのデカい声もむなしく、結果は無得点。僕はまた溜め息を吐いた。八回は打者に球を当てさせることなく3人を三球三振に仕留めた。そして、また吠えてしまった。
今度こそ頼む、と願った。しかし、願いは通じず、次の回になる。もう溜め息を吐くしかなかった。9回、この回も3人で抑えた。
けど、この回だけは吠えなかった。なぜなら、僕からこの回は始まるからだ。とりあえず打席に立つ。そして、集中する。
すると、後ろの方から女の子の声が聞こえた。ハッキリとは覚えてはいないけど、恐らく打てだろうなぁ、とバットをしっかり握って初球を打った。打った球は飛距離を伸ばしながら宙を舞っている。そして、スタンドに入ると同時に歓声がわいた。サヨナラホームラン。ガッツポーズをしてダイヤモンドを駆け巡り、ホームに戻ってきた。審判がゲームセットと言った。少し経って、スタンドから花園桜子の声が密かに聞こえた。おめでとう、僕にはそう聞こえた。その時、初めて勝ったことに気がついた。
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