CASE1 あのコのためなら

3/26
前へ
/246ページ
次へ
この私、山中優奈(ヤマナカ ユナ)がこの喫茶店を知ったのは極々最近の話。私が日頃のイライラをなんとか解消しようと、道を歩いていた時のこと、 「コスプレ喫茶くれぱす、どうかご来店くださいませぇ♪」 と、私の心をズキュン打ち抜く萌えボイスを聞いたのが始まり。 それ以来、ずっとこの店に通いつめているわけで……もちろんあのコ目当てで!! 毎日のように変わるあの衣装も相まって全然飽きさせることをさせてくれない彼女に私は首ったけということ。 でも、この店にはこんな噂があるみたい。 “一番人気のあのコは実は男の子らしい” 驚愕したよ、そりゃ。だってずっと女の子だって思っていたんだから。どうやら店の方から流した話らしいし……信憑性は高いみたいだし……。 でも、そんな話信じるわけがない!!だってあんなにラブリーでキュートなあのコがそんな汚れた存在なわけ…… それに、男の子だったらあんなラブリーボイスをだせるわけないし、うん、そうだそうだ!! 「なら、調べればいいじゃない?」 「あ、あなたは……!?」 「ん?僕?僕はずっとこの店に通い続けている言わば常連客さ。君と同じ、あのコを見るためにね」 と、決めゼリフぎみな話し方をするデブオタ発見!! 「ところでさっきのは一体?」 「あぁ、僕もずっと見ているんだけど、あのコが男の子って決定的な証拠は見たことないんだよ。だからね?女の子って証拠を見つければいいわけだよ」 「な、なるほど……」 こんな人に言われるのは癪だけど、確かにその通り。 “わからないなら、調べればいいじゃない!” そんな彼の言葉は、私の胸に深く突き刺さった。 「わ、わかりました……私、決めました……あのコの性別、暴いて見せます!」 「ふふふ……百合もたまりませんですなぁ……いや、でも女装ボーイも……ふふふ」 この人、ちょっとキモく感じました。ってか、独り言聞かれてたし。今度からは気をつけよ。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

209人が本棚に入れています
本棚に追加