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2015年、春。
俺は近年、急速に近代化の進む東京に上京した。
そこは誰もが憧れ、色々な人間と煌びやかな高層ビルに彩られたまさに眠らない町。
そんな町に、俺は少々の期待と黄土色の肩掛け鞄、その中に入った雑貨品を持って降り立った。
大好きなカロリーメイドを口にくわえ込み、新たな自分に会える気がして、まだ見ぬ未知の体験や未知の世界に入ってきた気がして希望に胸がふくらむ。
そんなありふれた、誰もが感じそうな思いを体の奥へと押し込むように大きく深呼吸をする。
「スー……ハー………うし!」
現在の時刻、午後6時ジャスト。
俺はこれから世話になる学生寮へと行くべく、足を進める。
どんな出会いがあり、別れがあるのか、そんなこと知るよしもないが、もし願いが叶うならこのときの俺にぜひとも言ってやりたい。
「そんな期待は持つな」と。
この後の俺の生活、しいては周りの生活を垣間見た人なら誰もがそう思うだろう。
……いや、むしろそう思わないほうがおかしい。
人生の変わり目になりうるであろう上京で、人生どころか俺の価値観、常識、その他もろもろ全てのことの変わり目になろうとはこの時の俺は微塵も思っていなかった。
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