甘い雪解け

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椿はそう言われると、少しふて腐れ、詰まらなそうな表情を浮かべる。画家はお構いなしに話を続ける。 「それに、豆は難儀だ。非常に難儀だ。私がいかに精神込めて豆を描いたとしても、たった一粒の豆で、今言った様に、それが豆として万人に認識されるかと言われれば、甚だ疑問だ。いや、難しい。自信がない。私もまだまだ未熟ということかな・・・」 「何よそれ・・・とにかく、豆は描かないのね。じゃあ、恵方巻きが確かまだ冷蔵庫にあるわ!恵方巻きが良いんじゃない?」 「まだあるのか!?おいおい、一体、何日過ぎてると思ってるんだ」 「忘れてたのよ。でもいいじゃない。食べるんじゃなくて、描くんだから」 「良くないだろ。描かんぞ!絶対に描かんぞ」 「貴方・・・我が儘よ。画家は我が儘なの?」 「違う、拘りが在るんだ!いいか、食べ物は食べる物だ。描く物じゃない。いくら、上手く、美味そうに描いたとしても、それこそ絵に描いた餅じゃないか。そんな意味の無い事はしない」 「ふ~ん。でも、描くことに意味が在るわけ?意味があって描いているの?」 「・・・難しいことを聞くなぁ。描く事に意義がある。要は私が描きたいから描く。描きたくなければ描かない」 「何それ!やっぱ、我が儘じゃない!アハハッ」 「・・・そうかもしれない、いや、君には敵わないな」
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