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殺到する炎の矢。しかしどこか眠たげなほどの瞳は変わらない。余裕ということなのか?
無感情な表情のままほんの僅かに首を傾げる。それだけでまるで望んでそこを通るように外れる。
だが、ここで炎の矢の第2波が襲い掛かる。おそらくはケイが避けること前提で創られた魔術。
「厄介だねぇ。流石“イヴ・サクセサー”」
“イヴ・サクセサー”。それは世界を救った女神イヴの力の一部を継承した女性に付けられる俗称。彼女らは“魔法”を特に上手く精密に発動させる。まさに“イヴの力の一部の継承者”というわけだ。
再びケイは回避行動を取る。今度は全身を使って。しかし、
「・・・・・・げ」
まるでカエルがひしゃげたような声が上がる。気付けばルキは巨大な火球を発生させ、口元はニヤリと勝利を確信し歪んでいる。
「燃・え・尽・き・ろぉぉぉぉ!!!」
「こんな街中でんなもん使うなぁぁぁぁ!!?」
虚しくさえ感じるケイの痛烈な叫びも届かず、巨大火球はケイを中心とした位置に落下した。
ボフン、と気の抜けた爆発音が鳴った。
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