1112人が本棚に入れています
本棚に追加
『もう半世紀以上も昔のことになります。今でも信じることが』
ブツッとテレビの電源が消え、白髪に髭を蓄えた老人の姿が消えた。そしてゆっくりとソファから青年が上半身を起こし、「んー」と背伸びする。
「・・・・テレビ付けたまま寝てたのか。電気代キツいなあ」
大欠伸を一度青年はすると頭を掻きながら寝室へ向かう。どうやら寝直す気らしい。
しかし、そんな怠惰な思いはバイブレーションで振動しながら発光する携帯を見てしまったことであっさりと砕けた。
無視しようかと思ったがディスプレイに表示された名前を見てウッと顔を歪め、面倒くさげに着信を取った。
「ふぁい」
『その眠そうな声は何かな!?』
「煩い。俺の尊きヒマな時間を邪魔すんな・・・・」
『邪魔!?邪魔は無いでしょう!!?』
ちょっと泣きが入った幼なじみの少女の声が響いてきた。うんざりした状況になってきたことを感じた。
「あー、分かった分かった。で、何の用だ?」
『あ、うん。実はまた“あの人”出て、みんな負けたから行って来て』
「えー・・・・」
『今月の給料カットされるよ?』
「よし行って来る」
相手の意見を一切聴かず青年は携帯を切った。そしてハンガーに掛けていた黒いコートを身に纏い、右の手首と左の足首に翡翠色に輝く宝石をあしらったリングを着ける。
「そんじゃまあ、給料のために頑張りますか~」 扉を開け放ち、一気に全力で跳躍した。
‡ † ‡
最初のコメントを投稿しよう!