1151人が本棚に入れています
本棚に追加
「美香、先に行ってるぜ?」
俺はイヤホンを再び耳に装着しながら、玄関のドアに手を掛ける。
「お兄ちゃん待ってよ!」
ドタドタこっちに向かってくる足音。
「もう、途中まで同じ道なんだから、一緒に行ってもいいでしょ?」
不機嫌そうに美香は靴を履く。
「いや、別にどっちでも。」
俺は外に出ると同時に音楽プレイヤーの再生ボタンを押す。流れてきた曲はまたもシンディローパーのTime After Time。俺のお気に入りの曲の一つだ。そんな曲を朝から聞けるとは、今日は何かいいことでもあるのかね。
さて、音楽を聞きながら登校しているので、美香との会話など全くない。それはいつものことだが、しかし逆に何故美香はいつものことと分かっていながら、俺と一緒に登校したがるのか全く分からない。確かに同じ道だが、こういう空気は所謂気まずいというやつなんじゃないか、普通。俺はどうでもいいけどね。
ふと美香の顔を見てみる。うわ、何かしらんが満足そうに微笑んでいるし。何かあったのか?
「美香、どうした?何笑ってんだよ。」
「え?私笑ってた?ごめん、気付かなかったよ。」
「そっか。」
そう言って俺は音楽の世界にまた浸る。
最初のコメントを投稿しよう!