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「西荻家はとても暖かい家族だった。血もつながってないあたしを本当の家族の様に、大切にしてくれた。西荻家の両親は、共働きで忙しいのに、絶対にあたしと遊ぶ時間を作ってくれた。あたしはその二人が大好きだった。優しくて易しい二人が大好きだったんだ。」
その顔は、その頃の嬉しさと、今の悲しさが入り乱れた、複雑な表情をしていた。
「でも、あたしが中学二年生になったある日…西荻家は…いきなり貧乏になった。二人とも仕事をクビになって…さらには、あたしの知らない間にたくさん借金を作って…。最初は、家族三人で頑張ろうって、誓い合った。二人は毎日仕事を探しにいって、あたしは毎日すべての家事をこなしていた。学校に行く以外は、家事しかしていないくらいに、働いた。昔みたいに裕福じゃなくても、まだ毎日が楽しかったんだ。だけど…。」
絞りだすように、搾り取るように、言葉を吐き出す西荻。西荻のあまりにも痛々しくて苦々しい姿を見て、それでも俺は―。
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