第一章 貴族の紋章

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 晴れ渡る空……  窓越しから眺める空には小鳥達が戯れる。  いつの話だっただろうか……  少年は書斎にある机の前に腰かけ、昔姉に読んでもらったお伽話の事を思い出していた。  瞼を閉じて、過去の記憶にある思い出の断片を気ままに引っ張り出してみた……  幼い頃の記憶……  沢山浮かんでは己の意識を通り過ぎていく追憶の波が何処か心地よい……  その中の一つで、記憶の片隅にあった小さい男の子とその姉。  男の子は寝巻姿で、姉に昔話を聞かせてもらっていた。  彼は胸をときめかせ、人々を悪い魔神から救った『角の神様』と勇者達のお話を姉から聞いていた。  物ごころついたばかりの彼は、興味ある事には何でも聞いていた。  姉もまた大切な弟の期待に応えるべく、両手を最大限に使い彼の問いに答える。  彼の純朴な瞳に写るのは凛々しい『角の神様』の姿。  二人の溢れんばかりの想像力と大げさな表現が、より物語の絵本に描いている内容を更に盛り上げていく。  つい最近の出来事のはずなのに、懐かしくも甘い……  そんな幼い頃の想い出……image=320232363.jpg
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