第一章 貴族の紋章

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皇暦994年  暖かい春の日差し。  ここはセーブル地方、帝国領の東南に位置するアルタニアという国で、領主ディアン=アルタナシアが治めている国である。  アルタニアは東と西をつなぐ陸路、そして海上の商業貿易で栄えていた。  街にごった返す人々の群れ。  帝国ほどではないが、その人ごみこそが強国としての栄華を極めていた象徴だった。  ある日、少年が竹刀を持って大声をあげながら、目の前の標的に向かって突進していった。 「でぇぇぇい!」  標的の手から振り下ろされる斬撃。  その数々の攻撃があらゆる角度から打ち込まれる。が……… 「ほっ、ほっ、よっ、はっと……」  標的はリズミカルな息使いで彼の剣撃を避け、又は打ち流した。  標的に遊ばれる少年。  彼の足元が縺れ、あっと思いがけず声を漏らした刹那。 「頂き!」 カンッ  と竹刀で叩き付けられる激痛が彼の脳天を襲う。  竹刀を叩き付けられた少年の名前はリディク。  領主ディアンの息子リディク=アルタナシアである。  彼の髪はクリアグリーンに朱色の瞳で、髪型は首に少し髪がかかるくらいの長さでやや小柄である。  服装は貴族の普段着で、グレイがかったベストに青いズボンを着ている。  身長は約百二十センチくらいのごく普通の子供。image=320437628.jpg
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