99人が本棚に入れています
本棚に追加
皇暦994年
暖かい春の日差し。
ここはセーブル地方、帝国領の東南に位置するアルタニアという国で、領主ディアン=アルタナシアが治めている国である。
アルタニアは東と西をつなぐ陸路、そして海上の商業貿易で栄えていた。
街にごった返す人々の群れ。
帝国ほどではないが、その人ごみこそが強国としての栄華を極めていた象徴だった。
ある日、少年が竹刀を持って大声をあげながら、目の前の標的に向かって突進していった。
「でぇぇぇい!」
標的の手から振り下ろされる斬撃。
その数々の攻撃があらゆる角度から打ち込まれる。が………
「ほっ、ほっ、よっ、はっと……」
標的はリズミカルな息使いで彼の剣撃を避け、又は打ち流した。
標的に遊ばれる少年。
彼の足元が縺れ、あっと思いがけず声を漏らした刹那。
「頂き!」
カンッ
と竹刀で叩き付けられる激痛が彼の脳天を襲う。
竹刀を叩き付けられた少年の名前はリディク。
領主ディアンの息子リディク=アルタナシアである。
彼の髪はクリアグリーンに朱色の瞳で、髪型は首に少し髪がかかるくらいの長さでやや小柄である。
服装は貴族の普段着で、グレイがかったベストに青いズボンを着ている。
身長は約百二十センチくらいのごく普通の子供。
最初のコメントを投稿しよう!