第一章 貴族の紋章

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「痛って!」  受け流されたリディクの竹刀は地面に転がった。  大きく隙を見せた彼に、容赦なく標的は手に持った竹刀を振り下ろし、正確に彼の脳天に直撃させた。  耐えられない痛みが彼の思考回路を停止させ、正常な姿勢を保てなくなった彼は後ろに尻餅をついて激しく倒れた。 彼はそのまま左右に身体を転ばせて悶え苦しんだ。 「っっっつっうううううう!!」  彼の姉アレサは言った。 「ほーら、無闇やたらに振り回すから……」 「これでリディ、今日は七回死亡ね」 「命がいくつあっても足りないぞ?」  アレサは右手に持った竹刀を肩に当てながら彼を見下ろした。 「もう嫌だよ……なんでこんなことしないと行けないのですか?」 「僕、人を殺す技なんて覚えたくない」  嫌々剣の稽古をさせられていたリディクがとうとう音をあげた。
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