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平成19年6月30日
S刑務所の拘置鑑の二階の確定房で私は早い夕食を済ませて窓の外に広がる夕焼けをみながらはを磨きながら立っていた
私の名前は楠木亮
44歳4と言う数字が2つも並びとてもイヤな1年の始まりを暗示しているようで44歳になるのがとてもイヤだった
シャバには別れた妻と5人の子供と年老いた母親、鬱病の妹、を残していた
歯磨きを済ませて夕方の時報とともに仮就寝の号令がかかり
「フーッ」とため息をはいて薄いせんべい布団を敷いて
横になり週刊誌をパラパラとめくり眺めて投げ捨てるように布団の横に置いて
あお向けになり
約3畳の舎房の中で天井をながめ今回の事件を振り返った。
平成18年7月14日午前9時他の3人とN刑務所を仮釈放した。
仮出所式を終えて荷物を持って門の外に出ると、とても心地よい風がおいで、おいでをするように私を出迎えてくれた。
(あれ~?迎えに来てないなあ~)
私は門の周囲をぐるりと見渡しそう思った。
身元引受人の母、楠木由子の姿がなかった。
門の所に待ち会い所があり、そこの前でしばらく待った。
すると私の前に見慣れない、車が一台やって来た。
ちょうど私の待っている前に止まり、中から母と妹のサキが降りて来た。
母も妹も私を笑顔で出迎えて。
「ごめんなさい。待ったでしょう。少し車が混んでてね、遅くなって…」
そうすまなそうに話す母に私は首を振って。
「いや、いいよ大変だったね。迷惑掛けて、出迎えてくれてありがとう」
私はそう言って頭を下げ車に乗り込み、規則通り保護観察所に行き、手続きを済ませて、実家に戻った。
妹と義理の弟の大輔の2人が車で帰り、母と2人になり。
「母さんビールを一本くれる?」
そう言って母にビールを出してもらい、グラスにビールを注いで一気に飲み干し。
「う~んやっぱり娑婆はいいね!自由が最大の幸せだよ」
と言って、その日は久しぶりに母の作った料理を食べて自由の第一歩を歩み始めた。
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