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と内心思ったが。
「まだ相手と会ってないから何とも?」
「フィリピン帰れる?」
と甘えた口調で言った。
妻のマリアはフィリピン人で私がヤクザをしていた頃、知り合い結婚したのだった。
マリアが急に甘えた口調になったのは、私が入所中大金を稼いで貰える分があるので戻ったら楽しみにしているように手紙で伝えていて、マリアはそれをしっかり覚えていて私に聞いたのであった。
「心配するなお金は持ってくる」
そう伝えると、マリアの顔がパッと明るくなり、冷蔵庫のある所へ行って扉を開けてワインを出して私にもグラスを出して。
「飲んで」
と言って注いだ
(ハァ~お金の力は強いものだ)
と思った。
ワインを一口飲みマリアを見て
「マリア」
マリアはどうしたの?という顔を私に向けて。
「あのな、ここに10日ばかり置いてくれないか?お金いくらか払うから…」
マリアは頷いて。
「いいよ」
と言って手を出した。
私は苦笑して財布を取り出し中から3万円渡した。
マリアは3万円を受け取ると少しニヤリとして私の財布を覗き込んで。
「へえ~結構持ってるね、子供達の食事と洗濯たのみます」
と言って、テーブルの横に積み上げている。子供達とマリアの洗濯物を指差した。
私はその洗濯物の山を見て眉をよせて。
「えーこんなにあるのに乾かないだろ…」
マリアはなんでも無いことのような顔をして、口を開き。
「近所のコインランドリーで洗濯して乾燥してくれるといいから、お願い」
いぜん首を振っていた私にそう伝え。
「そう言う事でよろしく」
と言って、タバコを出して一本口にくわえ、百円ライターで火を付けて煙を吐いた。
私はもう…と牛のように一言言って、ワインを開けた。
そして携帯を伝えた
マリアは私の持っている携帯を見て小首を傾げ。
「ねえリョウちゃん」
「何?」
「その携帯どうしたの?それドコモじゃない私も、もう一台欲しいんだけど」
「これ?知り合いから作って貰った、でももう一台なんてムリだよ、もう少し待っててくれると、作ってやるよ」
「ふ~んわかった、それちょっと貸して」
私は携帯をマリアへ渡し。
「ああついでにおまえの番号とメールアドレス入れといて」
と、言って立ち上がり財布をもって玄関へ行こうとすると。
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